研究概要 |
海洋性ビブリオ菌の極に生えているべん毛(極べん毛)はNa^+の流入によって回転する分子機械である。その回転力発生には、モーター蛋白質と呼ばれる4つの蛋白質PomA、PomB、MotX、MotYが関わっている。PomAは4つの膜貫通領域(TM1-4)をもっており、PomBと複合体となってNa^+チャネルを形成する。PomBは一つの膜貫通領域を持ち、そこにはNa^+の流入に重要なAspが存在する。本年度においては,ジスルフィド架橋したPomA/PomB複合体を部分精製し、その超複合体形成を解析した。 最初に、D170C(TM3)変異のPomAと、ヒスチジンタグを持つPomBでS38C変異株を作製した。続いて、このPomA-D170C/PomB-S38C-Hisを含む膜画分から、オクチルグルコシドで可溶化してPomA/PomB複合体を部分精製し、ゲルろ過クロマトグラフィーとジスルフィド結合の解離実験から架橋産物の構成を調べた。その結果、ジスルフィド架橋の有無に関わらず、複合体を部分精製できたことが明らかになった。これら3つの架橋産物はいずれも、230〜440kDa付近に溶出された。また、PomBのみからなる約200kDaの架橋産物が確認され、PomA/PomB複合体がこれまで考えていた以上の大きな複合体を形成する可能性を示した。加えて、ジスルフィド結合の解離実験からも、単純に1PomA:1PomBから構成されない異なる性質を持つ架橋産物の存在が考えられた。以上の結果は、共にPomAとPomBによる複雑な複合体形成を示唆し、これらをいかに精製するかという方向性を決める上でも,結晶構造解析に結びつけていく上でも重要なデータとして位置づけられる.
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