研究概要 |
[Fe-S]クラスター生合成系酵素の一つである大腸薗CsdBの基質複合体およぴ反応中間体複合体のX線結晶構造解析を両者共に2.8A分解能で行なった。CsdBと基質の複合体(CsdB-ASP)結晶は、極低反応性基質アスパラギン酸を2M含む0.1Mリン酸緩衝液中に母結晶を25℃で2日間浸けて調製した。また、反応中間体複合体(CsdB-PG)結晶は、同様にして自殺基質であるプロパルジルグリッシンを0.8M含む溶液中に母結晶を1日間浸漬して調製した。得られた両複合体結晶を用いてリガク社製RAXIS IIcでそれぞれ約62,000個と65,000個のX線回折強度データを収集し、約26,000個の独立な反射データを得た。二量体分子から成るこれら結晶中のサブユニットの構造解析は、既に2.8A分解能で構造決定済みのCsdBサブユニットの構造(406残基中のPhe3-Gly406を含む)を初期構造モデルとして用いて行なった。まずタンパク質部分を剛体近似で位置付けし、更にプログラムCNSの分子動力学的手法で構造精密化を行った。途中、構造変化部を差フーリエ法で修正し、更に補酵素PLP構造を加えて精密化を行った。最終段階で各リガンドの構造を加えた。PLPとリガンドまたはタンパク質中のアミノ酸残基との結合は、電子密度の流れに基づいて行った.精密化を収束するまで行い、R値22.4%および21.6%のCsdB-ASPおよびCsdB-PGの構造を得た。 複合体の全体構造は、酵素のみの構造と似ていた.CsdB-ASP複合体では、PLPがLys226とインターナル・シッフ塩基を形成し、活性部にはArg379と水素結合したASP分子が存在していて、ミカエリス複合体の構造をとっていた。一方、CsdB-PG複合体では、PLPがPGとシッフ塩基を形成し、活性部でエックスターナル・アルディミンを形成していた。
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