研究概要 |
「小胞体膜におけるペプチド輸送」のマシーナリーの要となるATP駆動型ペプチド輸送体TAP(Transporter associated with antigen processing)と、その新ファミリーTAPL(TAP-Likeの略称)の機能と構造を解明する目的で、以下の研究を行った。 (1)TAPファミリー(TAP1,TAP2,TAPL)の2量体形成とアイソフォームの構造と発現 TAP1,2,LのGFP融合蛋白を用い、小胞体を含む小胞輸送系への細胞内局在を明らかにした。更に局在化シグナルを解析する過程で、N末側の膜貫通領域でのファミリー間の相互作用を見い出した。予想したTAP1とTAP2以外に、,TAPLはTAPL、TAP1、TAP2とそれぞれ相互作用することが示唆された。TAPLのホモ2量体はTAP1,2とのヘテロ2量体よりも安定に存在する。これらは2量体形成により、ペプチド輸送マシーナリーに多様性を与えることが考えられた。更にTAPLにはC末端の異なるアイソフォームがラットで4種、ヒトで3種、存在することを3'RACE法及びRT-PCR法により見い出した。ABC輸送体の基質認識や輸送効率がC末端配列に影響する例もあり、これらのアイソフォームが輸送基質や輸送効率、またそれらの制御にどのような影響を与えるかが興味深い。 (2)結晶化にむけたTAPLの大量調製 ラットとヒトのTAPL完全長cDNAを含むベクターを用いたほ乳類培養細胞への発現系は既に成功していた。今年度、大量調製が可能なハエ由来培養細胞S2細胞にて構成的に高発現する細胞株を得、更にその蛋白発現量を確認した。ABC領域(ATP結合カセット)は大腸菌で大量発現し、結晶化条件を検索中である。今後はこれらの系におけるATPase活性ならびにペプチド輸送活性を解析すると共に、X線結晶解析のための大量調製を開始する。
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