研究概要 |
小胞体膜ペプチド輸送マシーナリーの要となるATP駆動型ペプチド輸送体TAP(Transporter associated with antigen processingの略称)とその新ファミリーTAPL(TAP-Like)の構造と機能を明らかにする目的で、以下の研究を行った。 1)TAPL発現安定細胞株と輸送活性測定系の構築 昨年度に構築した、TAPLを安定高発現するハエ由来培養細胞S2細胞株におけるTAPLの細胞内発現部位を決定し、小胞体並びにリソソームにおける発現を明らかにした。更にこの細胞より調製した膜画分からのTAPL蛋白の可溶化条件を検討した結果、Triton X-100による可溶化に成功した。膜画分における発現量はおよそ1%であった。この蛋白画分を用いてTAPLのATP結合活性をnucleotide-binding columeを用いて解析した。その結果、ABC輸送体に特徴的なATP-agarose, ADP-agaroseに対する結合を検出した。さらに基質依存のATPase活性をみるためのアッセイ法を習得したので、基質ペプチド依存の輸送活性を検討することが可能となった。 2)TAPL高発現酵母の作成 結晶解析に必要量の蛋白を精製するには、昆虫細胞より酵母を用いるほうが容易であるが、外来異種蛋白の場合、分解される恐れがある。TAPやTAPLと同じABC輸送体のBサブファミリーに属するMDR1(薬物排出ポンプ)を安定発現するプロテアーゼ欠損株を入手し、TAPL発現株を作成した。 3)TAPL発現大腸菌からの可溶化の検討 膜貫通領域を含まず、C末端にhistidine tagを連結したABC領域を含む部分構造体を発現する大腸菌より可溶化条件を検討した。8Murea存在下でNiアフィニティカラムで精製する条件を見出した。
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