本特定研究の課題における我々の研究課題で、複数の反応中心を持つ可溶性フラビン酵素の構造と電子伝達についての系統的な理解を得てきた。今までに、キサンチンを電子供与体としてNADを電子受容体とする脱水素型、酸素を電子受容体とする酸化酵素型の構造を解いたが、更に高分解能1.6Åでの解析が進行中である。又フラビン周囲の構造が脱水素酵素と酸化酵素で異なる事が構造上及び、各種変異酵素の解析から分かった(現在論文投稿中)。更にフラビンの反応性に関与するアミノ酸各種の変異酵素を昆虫細胞系で発現させた。性質を調べた結果、FADに背面からスタックする1残基の変異で、フラビンの酸化還元電位が上昇し、NADとほとんど反応しない事が分かった。又脱水素酵素型でフラビンの周囲に負のイオン環境を与える、Glu残基をGln残基に変異させた酵素では、酸化酵素型活性を強く示すと同時に酸化還元電位もある程度上昇させていた。これら変異酵素についても、酵素学的に更に性質を検討すると共に、結晶化を試みている。又キサンチン脱水素を阻害して血中尿酸値を下げるアロプリノールは古くから抗痛風剤として有名であるが、新規痛風剤として開発中のTEIは本酵素の酸化型還元型ともに結合しKd=10^<-9>と強い。このTEIと本酵素の供結晶構造はアロプリノール結合部位と同じくモリブデンサイトであるが、結合様式は大きく異なる。アロプリノールは還元型酵素のモリブデンと共有結合を持つが、TEIは持たない。しかし構造的にモリブデン近傍の空間をきっちり埋め、モリブデンサイトの周辺アミノ酸残基に複数の結合部位をもつため強固な結合を呈している。現在更に酵素基質中間体を呈すると推定される、新規阻害剤との供結晶の解析を進めている。
|