研究課題
脊椎動物の終脳先端部に形成される嗅球は、嗅覚系の一次中枢として極めて重要な役割を担っている。興味深いことに転写因子であるPax6の遺伝子異常ラット胚(rSey^2/rSey^2)は、嗅球の位置異常という表現系を示す。そこで本研究では、このrSey^2/rSey^2胚を材料として嗅球発生におけるPax6遺伝子の機能解析を行い、嗅球発生の分子機構の解明を目指した。1)分子実験発生学的手法によるrSey^2/rSey^2胚の嗅球位置異常の解析哺乳類全胚培養系と終脳器官培養系を用いて、神経上皮細胞の標識、嗅球神経前駆細胞の移植、嗅上皮の除去、並びに外来性Pax6遺伝子の強制発現といった実験を行った。その結果、a)rSey^2/rSey^2胚の嗅球位置異常は、嗅球神経前駆細胞(僧帽細胞前駆細胞)の移動パターンの異常によってひき起こされている。b)この細胞移動パターンの異常は細胞非自律的な異常であり、rSey^2/rSey^2胚の終脳組織におけるPax6遺伝子の機能が失われたことに起因することを明らかにした。2)発生期の終脳において嗅球発生を制御する遺伝子の探索発生期の終脳に発現しており、rSey^2/rSey^2胚においてその発現パターンが変化している遺伝子を探索した結果、fgf-receptorであるfgfr1、fgfr2、fgfr3、fgfr4の発現レベルがいずれもrSey^2/rSey^2胚終脳で減少していることを見い出した。今後、fgfシグナルと嗅球の形態形成との関連の解析が必要である。
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