Src型チロシンキナーゼの神経系での機能解析を行い、以下の結果を得た。 1)NMDA受容体のチロシンリン酸化の意義付けを進めた。樹立したNR2B Y1472Fノックインマウスの電気生理学的解析及び免疫組織学的解析を行った。また行動学的解析のための準備を行った。NR2Aのチロシンリン酸化についても電気生理学及び細胞生物学的手法で解析中である。 2)PSD-95が後シナプス肥厚部においてSrc型キナーゼの基質となることを見いだした。そのチロシンリン酸化残基をGKドメイン内の2残基と決定した。PSD-95のリン酸化はDAP-1によりPSD-95のSH3-GKの相互作用が解除されることで促進された。一方、PSD-95のリン酸化によりPSD-95とDAP-1との会合は阻害された。 3)Src型キナーゼの標的基質のスクリーニングにより、新規分子BANKを同定した。BANKはB細胞に発現が高く、LynとIP3受容体との間の介在分子として機能することを見いだした。BANKの神経系での役割は解析中である。また、他複数の基質候補分子の解析を進めると共にFyn結合分子をYeast two-hybrid systemで検索している。 4)Src型キナーゼの転写標的遺伝子の同定のため、Fyn欠損マウス脳と野生型マウス脳とでの遺伝子発現の違いをmicroarray法で検討した。その結果、複数の遺伝子についてFyn欠損マウスでの発現の低下を見いだした。現在はこれらの遺伝子の発現をReal-timePCR法などで確認している。 5)今後の生化学的・細胞生物学的解析のために、活性化型・不活性型Fynのアデノウィルス発現系を立ち上げた。
|