今年度は、ヒト血液神経関門(BNB)のin vitroモデルを構成する細胞としてより適当と考えられるヒト末梢神経神経内膜微小血管由来内皮細胞(PnMEC)の純培養法の確立に成功した。方法は研究者が開発したウシ末梢神経神経内膜由来内皮細胞の培養法(J Neurosci Res 1997)に準じて行ったが、培養条件には若干の改訂が必要であった。剖検、あるいは生検腓腹神経のいずれからも培養可能であった。本細胞は、ウシ脳微小血管由来内皮細胞(BMEC)やPnMECと同じく細長いfibroblastに類似した形態を示し、時に多角形に近い形を呈するが、培養皿上でconfluentとなるに従い、明らかなcontact inhibitionを示す単層を形成した。内皮細胞のマーカーであるDil-Ac-LDLの細胞内取込み能を有し、抗von Willebrand抗体を用いた免疫染色でも細胞質内に明らかな陽性顆粒を認めた。より若年の患者から得られた細胞ほど優れた増殖能が得られる傾向があった。電顕的には細胞接着部位にelectron denseなtight junctionが観察され、in vitroでもバリアーとしての機能が維持されるであろうことが示唆された。このヒトPnMECの純培養法の確立により、BNBの分子細胞学的研究の可能性が飛躍的に広がることが期待される。現在、本細胞の生化学的な解析並びに他臓器由来のヒト内皮細胞と比較したmRNA発現パターンの解析が進行中である。
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