本年度は、これまで我々が製作し使用していた超偏極Xe-129製造装置に改良を加え、到達偏極度を1桁上げることが出来た。即ち、従来の装置では偏極度は1-2%であったところを、クエンチングガスを加えて希釈することにより偏極度の向上を計り、希釈ガスの添加条件を種々検討しガス組成の最適化を行うことにより、Xe-129自身の偏極度として35%が達成出来た。ただし、クエンチングガスとして窒素やヘリウムガスを加えているため、実際の適用にはこれら希釈ガスを分離する必要があり、現在のところ、偏極度20%の純Xeガスが単離出来ることが確認できている。さらに分離の実験条件を詰めることにより、分離による偏極度の低下を極力避けるよう検討中である。 超偏極希ガスの生体投与の為の製剤開発に関しては、市販のガス含有製剤ではガスの含有率が5%程度と低いため、ミセル、エマルジョン、リポソームなどへの希ガスの溶解を試みた。これらに溶解したXe-129の化学シフトは、気体で0ppm、PFOBエマルジョン中で約100ppm、脂質エマルジョンや水中では約200ppmと幅広く変化した。これらの溶解状態で化学シフトの温度変化やpH変化を調べたところ、PFOBエマルジョンでは水中よりも2桁大きい温度係数が認められ、Xe-129化学シフトを利用した非侵襲生体内温度測定に利用できる可能性が示された。なお、精密に化学シフトの温度依存性を測定することにより、純Xeガスについても温度依存性があり、温度係数が-0.0032ppm/℃であることが分かった。
|