研究概要 |
本研究の目的は,創作舞踊や新しい振り付け動作に代表されるような観る人に感動を与えるような,全く新しい一連の順序運動を創発し獲得するため,中枢神経系がどのような評価関数を採択して運動指令の生成を行っているかを感性情報処理,脳の計算理論,ロボティクスの観点から明らかにすることである.この研究目標を実現するため,次のような6項目の検討を行った.a)感性評価と統計手法を用いた「動きと印象」の定量化.b)動作が観察者に与える印象を検討するためのCGアニメーションシステムの開発.c)舞踊における繊細な手指3次元動作を無拘束で推定するための画像処理.d)単眼カメラによる3次元ジェスチャ認識.e)ヒト型ロボットアームの設計試作と制御実験.f)精緻な舞踊動作を生成できるヒト型ロボットハンドの設計,である. 項目aの解析の結果,印象ごとに,運動部位や運動特性との関係が重み付き線形和の形で定量化できた.しかも,舞踊に関する専門知識が重回帰分析に及ぼす影響も定量化できた.項目bでは,任意の2つの舞踊動作の各関節の時系列角度データをフーリエ変換し,関節間の位相に注意しながら周波数領域で合成と逆変換を行い,新しい舞踊動作を合成するCGアニメーションツールを作成した.その結果,例えば「陽気さ70%,力強さ30%」や「優雅さ200%」の動作が人工的に生成できるようになった.項目Cでは,動画像の各フレームに対数極座標変換を施すことにより,データ量の低減と高速化,対象物体に関しては高解像度,の両条件を満たす実時間の手指自動追跡および3次元形状推定システムを構築した.項目eでは,ヒト上肢運動に存在する軌道,関節角度,筋張力などの不良設定問題を説明する最適制御モデルを実験的に検証したり,新しい随意運動モデルを構築し検証するためのヒト型ロボットアームを設計・試作した.項目fでは,見まねにより動作を再現できるヒト型ロボットハンドを設計・試作した.
|