サルのサッカードを指標にしてコリン作動性システムによる動機付けのメカニズムを解析した。サルの視覚誘導性サッカード課題において、一部のニューロンがサッカード運動に関連した活動を示した。その中で視野のある部位にサッカードを行う時に発火を増加させるニューロン群(バーストニューロン)と視野のすべての部位にサッカードを行う際に発火を減少させるニューロン群(ポーズニューロン)が見られた。バーストニューロンは最適方向に対してバーストを生じさせると同時にギャップ課題におけるギャップ期間中に徐々に発火を増加させた。また、ポーズニューロンは発火のポーズと同時にサッカードギャップ期間中に発火を徐々に減少させた。 一部のニューロンで課題遂行中の報酬に対する活動が見られた。PPTNにおいて課題なしの報酬のみに対する反応は約200msの潜時で得られるが、サッカード課題遂行中では報酬反応の開始は報酬前から報酬後にわたって見られる。この結果はPPTNニューロンの課題中の報酬活動は課題遂行に関連した活動によって修飾を受けていることを示唆している。 報酬量を増加させると課題の成功率が上昇すると同時に課題開始時に点灯する注視点に向かうサッカードの反応時間が減少するという行動実験の結果を得た。さらに、報酬量を変化させると注視点へのサッカードの反応時間が変化すると同時に脚橋被蓋核(PPTN)ニューロンの注視点点灯に対する視覚応答が変化するという実験結果を得た。この反応は注視点に向かうサッカードの反応時間や課題の遂行度合い〔成功率〕という動機付けやglobal attentionを反映する指標と密接に関係していると思われる。 この活動は、黒質緻密部ドーパミン作動性ニューロンの報酬に対する予測的反応の形成に寄与していると考えられる。
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