我々はサイトカイン情報伝達系に関わると考えられるSTAM1/2のin vivoでの機能を調べるためにそれぞれの欠損マウスを作成したが、IL-2やGM-CSF反応性に異常はみられず、T細胞等の発生にも異常はなかった。ところがSTAM1/2の二重欠損マウスは胎生11.5日までに全て死亡した。本研究ではlck-Cre遺伝子導入マウスを用いT細胞特異的STAM1/2欠損マウスを作成し解析を行った。 1.T細胞特異的STAM1/2欠損マウスでは、胸腺細胞数は対照マウスに比べ約40%に減少し、TUNEL染色陽性細胞が増加していた。胸腺内SP細胞の比率が低下していたが、DN細胞におけるCD44CD25マーカーによる各分化段階の割合は正常であった。脾臓、リンパ節の成熟T細胞は著名に減少していた。2.抗CD3抗体とIL-2、IL-7の共刺激下での全胸腺細胞あるいはCD4SP胸腺細胞の増殖反応は有意に低下していた。胸腺細胞のin vitro培養時の生存率を調べた結果、DP、CD4SP細胞ともに生存率が有意に低下していたが、Bcl-2の発現などに差異は認めなかった。3.STAMはTCR刺激にてもチロシンリン酸化される分子であり、上記表現型がTCRシグナルの異常によるものなのかを調べるため、抗CD3抗体によるTCR刺激後の情報伝達能を調べた。DP胸腺細胞では、各種蛋白のチロシンリン酸化、ERKJNKのリン酸化およびP38 MAPKの活性に差異は認めなかったが、CD4SP胸腺細胞では、JNK、P38MAPKのリン酸化は有意に亢進していた。TCR刺激における細胞内カルシウム濃度の上昇についても調べたが、DP胸腺細胞、CD4SP胸腺細胞において差異は認めなかった。現在STAM1/2欠損がどめようなメカニズムにより細胞死を誘導するのかについて解析を続けているところである。
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