研究概要 |
アレルギー性疾患の発症には免疫機構の異常、とくにIL-4とIL-5を産生するCD4陽性T細胞(Th2細胞)の選択的活性化が深く関与している。我々は、IL-2をはじめ多くのサイトカインにより活性化されるSignal transducers and activators of transcription 5a(Stat5a)の遺伝子欠損マウスではアレルギー性炎症における組織好酸球浸潤が著明に低下していること、そしてその原因として、Stat5a欠損マウスでは、IL-5をはじめとするTh2サイトカインの産生障害とIL-5に対する好酸球造血の障害が認められることを示した(Blood 95:1370,2000)。さらに我々は、Stat5a欠損マウスではTh2細胞分化が選択的に障害され、逆にTh1細胞分化は亢進していること、Stat5a欠損T細胞にレトロウイルスを用いてStat5aを発現させるとTh2細胞分化の障害が解除されることを明らかにした(Blood 97:2358,2001)。そして本申請研究において、Stat5aにより発現誘導される事が知られている既知の分子の発現についてスクリーニングを行い、Stat5a欠損マウスでは、CD25陽性免疫制御性細胞(CD25陽性細胞)が減少していることを見出した。そして、野生型マウスからCD25陽性細胞を除去するとStat5a欠損マウスと同様にT細胞分化がTh1側にシフトすること、さらにRag-2欠損マウスを用いた細胞移入実験によりCD25陽性細胞がアレルギー性炎症を増強する方向に機能していることを明らかにした(Am. J. Respir. Crit. Care Med. 164:680,2001.)。14年度は、CD25陽性細胞によるT細胞分化制御の分子機構を解明するとともに、CD25以外のStat5下流分子もT細胞分化に関与している可能性を考え、レトロウイルス発現クローニング法を用いてStat5下流分子を検索する予定である。
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