我々は、卵白アルブミン(OVA)反応性CD4陽性DO11.10T細胞を、核内発現型OVAトランスジェニックマウス(LdnOVA)に移入すると、antigen-experienced T cellの形質を表現し増殖しながらもアナジーに陥ること、このアナジーはLdnOVA由来樹状細胞或いは抗原負荷樹状細胞の繰り返し移入により再現されることを見出した。これは、2シグナルモデルのパラダイム下の、共刺激なしの(増殖刺激でない)抗原刺激下に誘導されるこれまでのアナジーとは異なる。そこで、この新たなるアナジーの誘導機構を解析した。antigen-experienced CD4陽性T細胞をin vitroにおいて24-72時間後再刺激すると増殖応答が低下する。これは、Ras-Erk経路の異常、細胞周期遅延化を伴っていた。刺激DO11.10由来CD4陽性T細胞をLd-nOVAに移入すると、同様にErkの活性化障害、細胞分裂回数低下が確認された。従って、effector/memoly CD4陽性T細胞は、繰り返し抗原暴露によりin vivo及びin vitroにおいて低反応と細胞周期の遅延化が誘導されることが判明した。これらの事実は、一定の時間間隔を置いて連続するという文脈において、活性化刺激は制御刺激へと変換されることを示す。この機構はこれまで知られていなかったeffector/memoryCD4陽性T細胞段階での制御機構であって、continuousに存在する抗原に対して、T細胞が低反応を保つという免疫学的寛容維持の一翼を担う可能性が考えられる。
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