免疫シグナル伝達に必須のチロシンキナーゼは、様々な免疫受容体の細胞内領域やLAT、BLNK等のアダプター分子をリン酸化することでSH2やPTBを持つ分子をシグナル系にリクルートする。代表者らが発見したマルチアダプター分子Dokとその類縁分子、Dok-2、Dok-3は全て免疫担当細胞に高く発現する。昨年度までの本研究により、我々はDok、Dok-2欠損マウスを樹立し、DokがB細胞受容体下流で増殖とMAPキナーゼに抑制性のシグナル分子であることを発見した。本年度の研究においては、DokのB細胞受容体下流での作用機序に関する解析と、Dok及びDok-2の免疫系全般における生理機能の解析等を計画した。 1.Dok、Dok-2欠損マウスのT細胞機能を詳細に検討する為にC57BL/6マウスへの戻し交配を進め、現在、前者が10代目、後者が7代目となり、既に解析を始めている。 2.Dok/Dok-2二重欠損マウスは、5ヶ月齢以降、高頻度に脾臓の腫脹を呈するようになり、腫脹した脾臓においては、白脾髄の過形成と赤脾髄におげる髄外造血が認められた。また、そのように腫脹した脾臓においては顆粒球様細胞の過増殖が確認された。現在、この過増殖細胞の性状を詳細に検討すると共に、Dok、Dok-2欠損の骨髄球系細胞の分化や増殖に関する影響を検討している。 3.Dok-3欠損マウス作成に関しては、ターゲティングベクター作成の為に、その遺伝子構造の検討を始めた。 4.B細胞受容体下流でのDokの作用機序に関しては、Dokの上位の制御因子として報告されたSHIPについて検討し、そのカルボキシ末端にあるリン酸化チロシンを含む配列がDokのPTBドメインの標的になることを培養細胞における再構成系によって確認した。
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