1.Id2欠損マウスは二次リンパ組織であるリンパ節・パイエル板を完全欠損するが、鼻咽頭関連リンパ組織(NALT)も完全欠損することが明らかになった。また、胎仔肝細胞、あるいは二次リンパ組織の形成に係わるリンフォトキシン産生性の細胞集団をId2欠損マウスの新生仔に移植することにより、NALTが再構築されることを示した。 2.Id2欠損マウスは高IgE血症を伴うTh2反応優位の状態にある。ナイーヴCD4陽性T細胞のTh1/Th2細胞への内因性の分化能やマクロファージのIL-12産生能に問題はないが、マウスにおいて同定されている4種類の樹状細胞のうちCD8α陽性のサブセットが選択的かつ著明に減少していることが判明し、Th2反応優位の主要な原因の一つであると考えられた。 3.Id2欠損マウスのB細胞を検討したところ、骨髄と脾臓において分化過程に変異は見られないものの、LPSとIL-4の刺激による免疫グロプリンのクラススイッチは、IgEに選択的にスイッチし易いことが判明した。LPSとIL-4の刺激時にはE2A産物がCεのgermline promoterに存在するEボックスを介してCεのgermline転写を増強させIgEへのクラススイッチを導くが、正常ではこのときId2がスイッチを抑制し過剰なIgE産生を抑えているのに対して、Id2欠損マウスのB細胞ではこの抑制機構が欠落していることが明らかになった。この結果は、Id2がIgE産生の抑制分子として働いていることを示すものであり、Id2が新たなアレルギー治療薬のターゲットになりうる事を示唆する。 4.NK細胞の分化過程におけるId2の役割については、骨髄細胞にレトロウイルスを感染させたうえでNK細胞の分化を効率よく誘導する系を確立した。これにより、Id2欠損マウスの骨髄細胞にId2を導入することでNK細胞の分化障害をレスキューできる事を確認し、現在、Id2の各領域の活性を検討している。また、Id2欠損マウスが示す末梢CD8陽性T細胞の減少の原因の検討も継続している。
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