p38やERKなどのMAPキナーゼ(MAPK)は、自然免疫、獲得免疫の両面で重要な制御分子とされる。MAPKは、リン酸化で活性化される一方脱リン酸化で不活性化される。我々は、MAPKのCD領域にsevenmaker型の点突然変異を導入すると、MAPKと脱リン酸化酵素の結合性に影響を及ぼすこと見出した。そこで、免疫制御におけるMAPKの意義とその脱リン酸化制御の重要性を明らかにする目的で、sevenmaker型MAPKのノックインマウスを作製しその解析を行った。 作成したsem型p38αのノックインマウスは、ホモ、ヘテロマウスとも生存可能で妊孕性も保持していた。ホモマウスは低体重で、約半数の個体が生後に突然死した。ホモ、ヘテロマウスとも胸腺、脾臓、リンパ節のT、Bリンパ球画分には著変を認めず、Tリンパ球をCD3抗体で活性化した際の細胞増殖とIL-2産生にも大きな影響を認めなかった。 一方、エンドトキシンショックに対する応答性には大きな差異を認めた。マウス腹腔にLPS投与し、野生型マウスが投与後10時間以内に全例死亡する条件下で、ホモマウスの半数が生存した。次に、エンドトキシンショックに対する抵抗性のメカニズムを検討する目的で血中の各種炎症性サイトカインレベルを検討した。野生型マウスのLPS投与で見られるTNF-αの上昇がホモマウスではほぼ完全に消失していた。他にIL-6、IFN-γ、IL-1βの産生低下が見られたが、IL-12産生には影響を認めなかった。TNF-αはLPSによる肝障害の主要因子であり、その低下がホモマウスのLPS抵抗性の原因と考えられる。 以上の結果を踏まえ次年度はsem型p38αにおける細胞内シグナルの変化を検討するとともに、本年度新たに作製したsem型ERK2ノックインマウスの解析を行う。
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