腸管上皮内T細胞(intestinal intraepithelial T lymphocytes : IEL)は腸管上皮細胞間に認められる特殊なT細胞サブセットとして知られている。しかしその機能的役割は明らかではなくT細胞が選択的に腸管上皮内に浸潤、定着する仕組みも明らかではない。インビトロにおける実験からIELの腸管上皮内への定着は腸管内に多く発現するTGF-βがIELにおけるαEβ7の発現を誘導し、腸管上皮細胞が発現するE-cadherinと選択的に相互作用することが重要であると考えられている。 本研究で我々は、T細胞特異的にTGF-βシグナルの阻害分子であるSmad7を過剰発現したトランスジェニックマウス(T細胞特異的にTGF-βシグナルを阻害したマウス)を用いてIELの腸管上皮細胞間内への定着にIELでのTGF-βによるαEβ7の発現誘導が生体内において関与しているか否かについて検討した。このトランスジェニックマウスのT細胞はTGF-βによるαEβ7の発現誘導がおこらない。野生型マウスと比べてこのトランスジェニックマウスのIELの数が約半減していることが観察され、生体内においてIELでのTGF-βによるαEβ7の発現制御がIELの腸管上皮細胞内への定着に重要であることが示唆された。現在引き続き、本マウスを用いてIELの分化、機能発現におけるTGF-βシグナルの役割について解析中である。
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