研究概要 |
B細胞特異的アダプターBASH/BLNKは、抗原受容体(BCR)刺激後チロシンリン酸化され、Btk, PLCγ, Vav, Grb2等と結合し、PLCγ2の活性化を仲介する。またBASHのSH2ドメインに結合して活性化するHPK1キナーゼも同定された。BASH欠損マウスでは、成熟B細胞の減少、脾臓B細胞の抗IgM抗体に対する無反応、腹腔B1細胞の欠如、抗体産生低下などBtk欠損マウスと酷似した異常がみられた。また、骨髄にて小型プレB細胞が著減し、静止期にある大型プレB細胞が蓄積していた。従って、preBCRシグナル伝達にもBASHが必要であることが明らかになった。本年度は、新たに以下のことが明らかになった。(1)HPK1がBCR刺激によるIKKβの活性化、NF-κBの核移行およびDNA結合を正に制御すること。(2)BASH欠損DT40細胞ではBCR刺激によるAP-1およびNF-_κBの活性化が起こらないこと。(3)BCR刺激による骨髄未熟B細胞のL鎖editingがBASH欠損細胞では起こらないこと。(4)BASHを欠損する抗DNA抗体ノックインマウスにおけるH鎖およびL鎖のreceptor editingの頻度が著しく低下していること。(4)DNA結合性B細胞が末梢で有意に増加し、DNA-キャリア免疫により抗DNA抗体が産生されること。(5)BASHとCD19との二重変異によりプレB細胞分化が完全に停止すること。以上より、BASHはBCRシグナルを多様化し複数の転写因子の活性化を仲介すること、自己抗原認識によるreceptor editingの誘導にはBASHを介するシグナル経路が重要であること、免疫系形成において自己反応性B細胞の出現を防ぐためにreceptor editingが実際に働いていること、BASHとCD19とが協調してpreBCRシグナルを伝えていることが明らかになった。
|