本年度はリガンドスクリーニングによるカルモジュリン結合タンパク質遺伝子の単離と解析を行った。標識したカルモジュリンをリガンドとして用い、cDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、カルモジュリンと結合するクローンが単離された。シロイヌナズナのCaMBD86と名付けた667アミノ酸からなるタンパク質をコードする遺伝子は、検索の結果、イネにおいて病原菌感染やSAR誘導剤BTHで特異的に誘導されてくる遺伝子との相同性を示した。シロイヌナズナの葉をBTHで処理すると、CaMBP86遺伝子の顕著な誘導がおこることが発現解析の結果明らかとなった。 CaMBP86とカルモジュリンの相互作用について解析するため、大腸菌でCaMBP86の様々な欠失タンパク質をグルタチオンSトランスフェラーゼの融合タンパク質として発現させた。これらリコンビナントタンパク質をPVDF膜状に転写した後、ビオチン化カルモジュリンを用いてその結合能を評価したところ、アミノ酸490-554領域にカルモジュリンが結合することが明らかとなった。また、アミノ酸506-526領域の合成ペプチドIKVKLKNVSWAIASLSLKRPKAP (CMBPep)は、非変性条件下の電気泳動においてカルモジュリンの移動度をカルシウム依存的にシフトさせたことから、この領域がCaMBP86のカルモジュリン結合部位として同定された。植物の異なるカルモジュリンアイソフォームを用いた結合アッセイから、タバコにおいて過剰発現させるとSAR様の応答を引き起こすことが知られているSCaM4と相同性の高いアイソフォームMsCaMLがCMBPePに対して他より高い親和性を持っていることが明らかとなった。
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