宿主植物へ侵入した青枯病菌は、細胞間隙でコロニー化後、増殖を行う。その後導管へ侵入し、増殖を行い、植物体全体へ広がることが明らかとなった。細胞間隙でのコロニー化には、感染直後に青枯病菌からタイプIII分泌系を介して分泌されるエフェクターと宿主植物との相互作用が必要である。コロニー化した青枯病菌の細胞間隙での増殖には、侵入3時間以内の宿主植物との相互作用が必要である。本相互作用により、宿主植物は抵抗性誘導の有無を決定し、その結果、青枯病菌の増殖の有無が決定される。細胞間隙で増殖が可能となった青枯病菌は、侵入3時間後から導管へ侵入するまでの間に、タイプIIIエフェクターを分泌して宿主植物に新たな反応を誘導し、青枯病発病の有無を決定する。この相互作用で発病が可となった場合には、青枯病菌は導管へ侵入し増殖を行い、菌体外多糖(EPS)等の病原力因子の生産・分泌を行い、感染植物を発病させる。一方、本相互作用で発病が不可となった場合でも、青枯病菌は、発病可の場合と同様に導管へ侵入し増殖・移行することができるが、感染植物は発病しない。本相互作用には、宿主植物のシグナル伝達系に関与するtranslationally controlled tumor protein、elicitor-inducible LRR receptor like proteinおよびreceptor protein kinase-like protein等の遺伝子の発現が関与している。細胞間隙に生存する青枯病菌と宿主植物とのいずれの相互作用にも、hrp遺伝子群にコードされたタイプIII分泌系を介して分泌されるエフェクターが関与している。hrp遺伝子群の発現はHrpBに支配されており、hrpBの発現はPrhAに負に制御されている。貧栄養下である細胞間隙ではprhAの発現が行われないため、hrp遺伝子群の発現が誘導され、その結果、青枯病菌と宿主植物との相互作用がおこり、青枯病菌のコロニー化、細胞間隙での増殖および青枯病発病の有無の決定が行われる。一方、富栄養下の導管ではPrhAの発現が誘導され、その結果、hrp遺伝子群の発現が抑制されて、EPS生産が行われ、青枯病菌の発病力が量的に決定される。
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