1)神経細胞特異的Rac1ノックアウトマウスの作成 低分子量G蛋白質Rac1の神経回路形成およびシナプス可塑性おける機能をin vivoで明らかにするため、Rac1欠損マウスを、rac1の翻訳領域をloxPで挟んだrac1染色体DNAのBACトランスジーン(floxed-rac1-EGFP)でレスキューする実験を計画し、6系統の独立なrac1(+/-)/floxed-rac1-EGFPトランスジェニックマウス(Tg)を得た。現在、これらのマウスと小脳プルキンエ細胞特異的にCreを発現するrac1(+/-)/L7-Creマウスと交配し、rac1(+/-)/floxed-rac1-EGFP/L7-Creマウスを作成中である。このマウスはプルキンエ細胞特異的にRac1を欠損するはずで、神経細胞の樹上突起の形態、神経回路形成、グルタミン酸受容体を介した興奮性シナプス伝達を解析予定である。 2)NR2B/NR2A置換マウスの作成 ES細胞を用いる遺伝子操作マウスの作成はi)ターゲッティングベクターの作成ii)ES細胞へのベクターの導入、相同組換え体の単離iii)キメラマウスの作成と交配の3つの過程からなる。我々は効率的なマウス作成法を確立するため、フィーダーを必要としないES細胞を用いたノックアウトマウスの作成のためのセットアップをすでに行った。さらに、本研究のNR2B/NR2A置換マウスの作成ではI)の段階を簡略化するため、すでにマウスのほぼ全領域がゲノムデータベースの検索によって入手可能なC57BL/6の染色体DNAを用いたターゲッティングベクターによりマウス作成を試みた。144個のG418耐性クローンを解析したが、相同組換え体は得られなかった。現在、129/Svの染色体DNAを用い、ターゲッティングベクターを再構築中である。
|