研究概要 |
まず、小脳皮質の微細分画地図の作製についての基礎的所見として、小脳皮質が多数の微細な構築区画に区分されることを明らかにし、米国の専門誌に発表した。これは、下オリーブ核ニューロンの小脳投射様式に、非常に細かい部位対応関係があり、それにより、小脳皮質は「登上線維系微小投射領域」とでも呼ぶべき200程度の微小構築単位に区分けされるという仮説に合う結果であった。具体的には、ラットの下オリーブ核にビオチン化デキストランを細胞外微小注入して投射軸索を標識し、単一軸索を連続切片から再構築し、その枝(平均7本と判明した。)の投射様式を細かく解析した。近傍の下オリーブ核ニューロンの軸索の枝は、単一または複数個の、正中線からの距離がほぼ同じ、細い縦の帯状の範囲(「セグメント」)に投射した。やや離れたニューロンは、同一の縦の細いバンド上において、吻尾側方向にずれた別のセグメントに投射した。これまでに良く知られているA, B, C, D等と呼ばれる小脳皮質の縦のゾーンは、幾つかの縦の細いバンドで構成され、ここのバンドはさらに複数のセグメントで構築されていると考えられた。ここで明らかにされたセグメントは、小脳皮質の機能単位を表す可能性のある小脳皮質の微細な構築区画である。 次いで、小脳皮質の特定領域において、セグメントの構築を完全に明らかにして「地図」を作成することに取り組んだ。交付申請書に記述した小脳虫部については現在進行中であるが、小脳片葉については、現在実験データがまとまったところで、論文作成に取り組んでいる。
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