グルタミン酸は中枢神経系における主要な神経情報伝達物質であり、学習や記憶の形成等のシナプス可塑性に深く関与する。従ってその受容体の機能を解明することは神経回路の成熟と特異的機能発現のメカニズムの理解に大いに貢献するものと考えられる。 我々が研究の対象とするグルタミン酸作動性シナプスは電気生理学的に広く解析が行われており、LTPやLTDという重要な現象の形成機構については多くの報告がなされている。近年、イオン型グルタミン酸受容体に関しては機能解析が分子のレベルで詳細に行われつつある。一方、代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)に関しては分子レベルでの機能解析は緒についたところである。従って研究計画で述べたように本研究ではmGluRに結合する蛋白を同定することによる受容体の分子レベルでの機能解析を行うことにした。 結果 1 酵母ハイブリッド法を用いてmGluR結合蛋白を同定しtamalinと名付けた。 2 tamalinは394アミノ酸からなりそのPDZ domainを介してmGluR1及び5のC末端部分と結合する。 3 tamalinは低分子量G蛋白Arfに対するGEFであるcytohesinとも結合する。 4 mGluR1及び5、tamalinとcytohesinは3量体を形成する。 5 Arfが細胞内輸送に深く関わることに一致してtamalinはmGluR1の膜表面への、mGluR5の神経突起への発現量を増加させた。 6 cytohesin以外にもtamalin結合蛋白を幾つか同定しており、現在解析を進めている。 まとめ 我々はmGluRl及び5に結合する蛋白tamalinを同定し、tamalinがmGluRl及び5の輸送に関わることを見つけた。イオン型グルタミン酸受容体の機能にPDZ domainをもつ蛋白が深く関わることが報告されているが、mGluRの機能に関してもPDZ domainをもつtamalinが重要な関与をするものと考える。
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