研究概要 |
神経回路は特異的は細胞極性を示す神経細胞が、その神経突起を介した接着により形成される複雑なネットワークシステムである。この神経突起形成に低分子量G蛋白質Rhoファミリーが深く関与しており、細胞骨格の再構築により、Rhoは突起の退縮を、RacとCdc42は突起の伸長を引き起こすことが知られている。しかし、Rhoファミリーにはほかに様々な種類のG蛋白質が存在するがそれらの機能はほとんど不明である。我々は中枢神経系に特異的に発現しているがその神経機能が全く不明なRndサブファミリーの神経細胞の突起形成における役割を検討した。 Rndは3種類(Rnd1,Rnd2,Rnd3)存在するが、まず、Rnd2の脳神経系での発現分布を明らかにするため、Rnd2特異的なペプチド抗体を作成した。この抗体を用いて、脳におけるRnd2の発現を免疫組織化学的に解析した結果、成体脳で主に視床、海馬、大脳皮質に免疫活性が観察された。また、発達期において、その免疫活性の強さ及び部位が脳の発達段階に応じて変化することがわかった。胎生17日から生後1日目にかけて、脳室下層及び海馬で一過性に発現したが、視床では主に正中中心核で生後7日目より発現が見られた。次に、Rnd2の神経機能を明らかにするために、Rnd2に結合する分子を酵母のtwo-hybrid法でスクリーニングし、活性型Rnd2に特異的に結合する新規のエフェクター分子をクローニングし、Rapostlinと命名した。RapostlinはN末端側にマイクロチューブルと結合するFCH領域を、C末端側にアクチン骨格を制御する分子のN-WASPと相互作用するSH3領域を有しており、PC12細胞や海馬神経初代培養細胞に発現させると、Rnd2が結合することにより、マイクロチューブルとアクチン骨格の再構築を起こすことにより、神経突起の分枝化を引き起こした。このことから、Rapostlinは神経突起の分枝化に関与する分子であると考えられる。
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