平成13年度には、2次のテクスチャー刺激を使う実験システムのセットアップと動物実験環境の整備とを行い実験を開始した。また、一次視覚野以降の中間段階の脳領域における視覚情報処理の定量的モデルを構築し、定量的な細胞の反応予測をおこなった。 本研究で、モデル構築に使用した神経細胞の機構は、テクスチャー(模様)の境界に反応する細胞、すなわち「テクスチャー細胞」であり、一次視覚野の単純型・複雑型細胞の出力を統合して作られており、視覚皮質の3段及び4段目の細胞であるとの仮説に基づいている。このような神経回路構造を、エネルギーモデルとよばれる神経回路を2段直列につないだ、「カスケード・エネルギーモデル」として実現した。このモデル細胞にさまざまなテクスチャー視覚刺激を提示して、モデルの各部位の細胞での反応を計算した。 この結果、ちょうど従来の一次視覚野の単純型・複雑型細胞が、明るさの違いで定義される物体の境界を抽出するのに適した特性をもっているのと同様に、カスケード・エネルギーモデル、すなわちテクスチャー細胞の出力は、テクスチャーの違い(あるいは有無)によって定義される物体の境界をよく抽出することを定量的に示すことができた。この計算実験に使われた視覚刺激には、いわゆる「主観的輪郭」と呼ばれる一群のパターンがあり、このようなパターンの境界線を、我々が見た時に得る境界の知覚と同様にモデル予測により示すことができた。 次年度は、2次のテクスチャー刺激を使い、ネコの二次視覚野(18野)及び比較のために一次視覚野(17野)において、計算実験で使用したテクスチャー刺激を用い細胞の受容野構造を計測する。また、両眼の同時刺激に対する反応を、テクスチャー刺激、明るさパターンの刺激両方について記録する。
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