神経回路網形成過程におけるシグナル伝達分子CRMP/CRAMの機能解析

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13041040
• 研究種目: 特定領域研究(A)
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 柳 茂 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (60252003)
• キーワード: Semaphorin / CRMP / CRAM / チロシンキナーゼ / Fes / Fps / Unc-33 / Plexin

研究概要

神経発生過程において分化した神経細胞は、軸索を進展し、最終的にそれぞれ特異的な標的を探し当て、神経伝達の場であるシナプスを形成する。この神経回路網の形成過程において、神経細胞が局所の標識分子を認識することの連続により、最終的な標的に至る。近年、これらの分子としてSemaphorinなどの反発因子およびその受容体が同定され、Semaphorinを介する反発性のシグナル伝達機構が注目されている。一方、Semaphorinによる神経成長円錐崩壊の細胞内シグナル伝達に関与する分子としてCRMP(Collapsin Response Mediator Protein)が同定された(Nature1995)。私たちはCRMP結合分子としてCRAMを同定し、CRAMがCRMPおよびチロシンキナーゼと複合体を形成していることを見いだした(Inatome et al. J. Biol. Chem.2000)。CRMPおよびCRANは線虫の神経走行異常を引き起こす原因遺伝子として知られているunc-33の遺伝子ファミリーに属しており、神経ガイダンスに関与するシグナル分子として注目されている。今回、私たちはSemaphorinの細胞内シグナル伝達に関与するチロシンキナーゼならびに関連分子の同定、機能解析を行った。その結果、CRAM/CRMPに会合するチロシンキナーゼとしてFes/Fpsを同定し、Semaphorinを介するシグナル伝達におけるFes/Fpsの重要な役割が明らかとなった(Mitsui et al. EMBO J. 2002投稿中)。さ.らにCRAM/CRMPに会合する複数の新規蛋白質の同定に成功し,(Takahashi et al. Mol. Biol. Cell 2002投稿中)、それらの機能解析を行っている。

研究成果

• [文献書誌] Yanagi, S.: "Syk expression and novel function in a wide variety of tissues"Biochem. Biophys. Res. Commun.. 288.3. 495-498 (2001)
• [文献書誌] Yanagi, S.: "Syk expression in endothelial cells and their morphological defects in embryonic Syk-deficient mice"Blood. 98.9. 2869-2871 (2001)
• [文献書誌] Miura, Y.: "Adhesion via CD43 induces Syk activation and cell proliferation in TF-1 cells"Biochem. Biophys. Res. Commun.. 288.1. 80-86 (2001)
• [文献書誌] Yamada, T.: "IL-1 induced chemokine production through the association of Syk with TRAF-6 in nasal fibroblast lines"J. Immunol.. 167.1. 283-288 (2001)
• [文献書誌] Hitomi, T.: "Requirement of Syk-Phospholipase C-ganmma2 pathway for phorbol ester-induced Phospholipase D activation in DT4O cells"Genes Cells. 6.5. 475-485 (2001)
• [文献書誌] Inatome, R.: "A critical role for Syk in endothelial cell proliferation and migration"Biochem. Biophys. Res. Commun.. 286.1. 195-199 (2001)