研究概要 |
私たちはセマホリンのシグナル伝達への関与が推測されているCRMP分子群に注目し、新規CRMPファミリー分子の同定、CRMPに結合するチロシンキナーゼFes/Fpsの同定、さらには2つの新規GTP結合蛋白質の同定に成功し、その機能解析を行っている。これらの蛋白質群はセマホリンのシグナル伝達のみならず、微小管動態の調節、ミトコンドリアの酸化還元機能制御、そして核内における機能調節が示唆された。以上の結果は、神経回路網形成の分子機構の解明において全く新しい視点を提供するものであり、その重要性はきわめて高い。また、これらの蛋白質群の機能異常が神経変性疾患の発症に関与することを示す結果も得られており、今後、神経回路網に関連する分子群による情報伝達システムの解明が神経変性疾患の病因解明や治療法にも有効であると期待できる。 1.チロシンキナーゼFes/Fpsによる微小管動態の調節機構の解明 私達は以前チロシンキナーゼFes/Fpsがセマホリンを介するシグナル伝達に関与していることを報告したが、詳細な分子機構は不明であった。今回の研究によって私たちはFes/Fpsが微小管と結合し、微小管の核形成と微小管重合を促進する役割があることを見いだし、Fes/Fpsは微小管の重合と安定性に深く関与していることを証明することが出来た。さらにFes/Fpsによる神経軸索の形態変化における微小管動態との関連性を示唆することが出来た。 2.CRMP/CRAMに会合する新規GTPase,ミトコンドリアSeptinの機能解析 私達はM-Septinがミトコンドリアに特異的に移行し、かつCRMP/CRAMをミトコンドリアに移行させる機能を有することを報告した。さらにM-septinによるミトコンドリア機能調節機構と神経回路形成における役割についての関連性が示唆された。 3.CRMP/CRAMに会合する新規Nuclear GTPase (CRAG)の機能解析 CRAM結合する蛋白質として分子量42kDaの新規Ras相同性GTPaseが同定された。(CRAM-associated GTPaseよりCRAGと命名)CRAGは核内に1ないし数個のリング状の核内封入体を形成し、CRMP/CRAMを核内移行させる機能を有していることが示唆された。
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