研究概要 |
霊長類研究所との共同研究により、律動性高頻度バースト発火(Fast Rhythmic Burst firing)を示すFRB細胞がサルの前頭連合野において多数見られたが、こうした細胞は、学習課題の遂行と関連してバースト発火の頻度を20Hz付近から70Hz付近まで素早く上昇させ、それに伴って、近傍の細胞の活動が非常に迅速に同期化されることを見出した(2001年度、日本神経科学会)。即ち、バースト発火の周期が高頻度になるに伴い、異なる神経細胞集団間の発火活動のcoherenceが上昇した。本年度は、予定を変更して、FRB細胞のコンピュータ・シミュレーションを行い、そうしたFRBニューロンを少数結合させたネットワークを構成し、coherenceがどのように変化するかのシミュレーションを行った。FRBパターンはカチオン・チャネルのカルシウム感受性の増加とともに、doublet, triplet, quartet spikingパターンに変化していくが、doubletからtriplet、或いはtripletからquartet spikingに変化させた瞬間に最も、任意の二細胞間において、活動の同期化の程度(coherence)が増加する結果となった。このシミュレーション結果は、実際にサルの前頭連合野で観察された結果と異なるが、その相違はシナプスにfrequency facilitationを想定すれば解消されると考えられる。神経細胞の周期的活動は、神経細胞群の活動の同期化に必要であり、ある特定の細胞から観察した他の細胞の同期化の程度(coherence)を時空間座標軸に表現することにより、ゼロか1の二値情報しか持たない神経細胞群の情報量が飛躍的に増大する可能性が示唆された(Aoyagi et al., 2001)。
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