私たちは皮質内抑制を担うGABA作働性細胞が、生理的・形態的性質が異なる複数のグループからできていることをこれまでに明らかにしてきた。今年度は、皮質電気活動が緩徐振動や、てんかん様発作の時期における抑制性細胞サブタイプの活動を調べることで、サブタイプの機能的役割分担の理解に役立つデータを集めた。大脳皮質のスライス標本で、細胞外マグネシウムを減らしてNMDA受容体を活性化させ、自発活動を引き起こした。外液のマグネシウムをなくして数分すると、0.1ヘルツ位のゆっくりとした周期で、自発的な脱分極(depolarization shift)が見られるようになった。さらに10分から15分くらいすると、もっと強い同期的興奮(long burst)がおきた。Long burstの最初の部分は、最も強い興奮で、高頻度発火した。Long burstの開始から数秒後、10から6ヘルツの周期的な変動(fast run)がみられた。これらの同期的活動における、皮質ニューロンの膜電位変動や発火様式を定量的に調べ、記録した細胞は、細胞内通電にたいする発火パターンや、細胞内染色・免疫組織化学で形態や発現物質を調べることで、どの皮質ニューロングループに属するかを同定した。その結果、FS細胞が、各時期で最も高頻度発火し、Long burstの最初では、400Hz位まで発火頻度を上昇させた。ソマトスタチン細胞、VIP細胞、大型CCK細胞の発火パターンは、FS細胞とは異なるものであった。大脳皮質ニューロンの発火様式は、興奮性入力の強度・時間パターンだけでなく、化学的・形態的性質の異なるサブタイプに依存して動的に変わることが明らかになった。
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