皮質のニューロンは、興奮性アミノ酸を伝達物質とする投射型の錐体細胞と、GABAを伝達物質とする抑制性の介在ニューロンである非錐体細胞の二つにわけられる。錐体細胞に比べて、抑制性である非錐体細胞の方は非常に多様な形をしたサブグループから構成されており、様々な皮質機能に関わると考えられる。前頭皮質のGABA作働性介在ニューロンを調べた結果、生理的・形態的・化学的性質の異なるいくつかのグループに分けられることがわかった。つまり、大脳皮質の中に複数のGABA作働性システムが組み込まれていると考えた。しかし、最近の他の研究室によって、発火パターン、シナプス伝達ダイナミックス、チャネル・ペプチドなどのmRNA発現、形態の解析から、数百種類の介在細胞が皮質内に存在しているという考え方が提唱されている。本質はどうであるのかを議論するために、形態的・生理的性質をある程度定量化して解析する必要があると考え、軸索分枝パターンや終末ブトンの軸索上・空間分布のニューロルシーダによる定量化を行った。これらの定量的パラメーターで、細胞群をクラスター解析すると、それぞれのクラスターが発火様式や物質発現パターンと相関することを証明できた。また、皮質GABA細胞は、細胞内通電に対する発火様式が多様であることが知られているが、皮質が同期的な活動をしている時にどのようにスパイクを出すかは殆ど調べられていない。脳切片標本でNMDA受容体を活性化させて0.1ヘルツと10ヘルツの興奮性電位のリズムをおこし、その時の非錐体細胞の発火様式を調べ、サブタイプごとに比較した。その結果、皮質に引き起こされた特定の周期的活動時に非錐体細胞のそれぞれのサブタイプでは異なる発火様式を示した。今後は、各グループのシナプス結合パターンや生理的特性を調べていくことで、各グループの機能的意義を検討していきたい。
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