CRMPはsemaphorinによる軸索ガイダンスに関与する細胞内タンパク質として同定されたが、その具体的な機能に関しては不明な点が多い。CRMPファミリーのメンバーとして現在5つの分子(CRMP1-5)が同定されているが、我々はそのうちの4つ(CRMP1-4)について、プロモーターの使い分けにより生じると考えられる別のアイソフォームが存在することを見出した。ゲノム構造解析の結果から、これらをCRMP-A type、またこれまでに知られているものをCRMP-B typeと命名した。CRMP-2A、-2Bをニワトリ視神経に強制発現させると、軸索の伸長、分岐に著しい影響を及ぼすことが判った。また、非神経細胞に発現させた場合、対照的な微小管パターンを形成し、細胞形態に変化を与えることが明らかになった。A、B両タイプはN末の構造だけが異なることから、この部分が微小管パターンの制御に重要な働きをしていると考えられる。 また、今回、発生工学的アプローチによって、特定の神経回路を可視化することを試みたのでその成果を報告する。GAP-43タンパク質のN端20アミノ酸をb-galのN端に融合させたreporter分子(GAP-LacZ)を、網膜神経節細胞特異的なプロモーター(Brn3b)のコントロール下で発現するトランスジェニックマウスを作製した。その結果、意外にも、視覚、聴覚、嗅覚、橋-小脳系などの神経回路網を可視化することができた。特に視覚系においては、背側網膜由来の視神経及び腹側網膜由来の視神経をそれぞれ特異的にラベルしたマウスラインが得られた。このreporterは、プロモーターを選択することによって、特定の神経細胞集団の軸索伸長の解析や神経回路の形成機構の研究に有用であると思われる。得られたマウスラインは他の遺伝子変換マウスとの交配によって神経回路形成に関与する多様な遺伝子の機能解析への応用が期待できる。
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