研究概要 |
中枢神経系における抑制性神経伝達物質であるガンマアミノ酪酸(GABA)の役割を、これまでにわれわれが作成したGABA合成酵素であるグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)のアイソフォームであるGAD65およびGAD67の遺伝子ノックアウトマウス、GAD67を蛍光タンパク質GFPで置換したGFP遺伝子ノックインマウスを用いて、明らかにすることを13,14年度の目的としている。13年度の成果は、1,恐怖条件付け(足への電気ショックで条件付けされた音刺激に対して恐怖反応を示す)の際に、野生型マウス扁桃体における細胞外GABA量の変化を脳内微小透析を行い測定した。音刺激に続いて3時間にわたり、GABAが50%に低下することを見いだした。2,恐怖条件反射として、GAD65欠損マウスでは通例みられるフリージング(すくみ)はかえって低下し、走り回り、ジャンプといった逃走行動が出現した。別に電気生理学的解析で見いだしたGAD65欠損マウスの扁桃体シナプスにおける異常活動とあわせて、これらの変化は恐怖条件付けの責任部位である扁桃体におけるGABA機能の関与を示している。3,聴覚脳幹反応を記録解析して、マウスの聴覚閾値(難聴の有無)をしらべた。野生型とGAD65欠損において、マウスでは閾値の差はなかったが、高齢マウス(生後1年以上)ではGAD65欠損マウスの閾値が野生型より20dB高く、70dBであり難聴とみなされた。長期間のGABA減少が聴覚系に障害をもたらすと考えられた。
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