研究概要 |
私達は、以前より神経認識分子群コンタクチン・サブグループに興味を持ち、このサブグループに属する新規の2分子NB-2、NB-3を見出している。これらの機能を探るためには遺伝子欠損マウスの作製が不可欠と考え、これら遺伝子の欠損マウスを作製し解析を行っている。昨年、このサブグループの中でコンタクチンについては、ミエリン鞘をもつ神経細胞ではCasprと共にパラノード領域に局在し、その構造保持と跳躍伝導において決定的な役割を果たしていることが、遺伝子欠損マウスを用いた解析から報告された(Neuron,30,396(2001);Neuron30,385(2001))。このようにコンタクチンの機能解析については、遺伝子欠損マウスの作製・解析により飛躍的な進歩が見られた。NB-2の発現部位はコンタクチンなどの他のサブグループ分子と比べ特に限局されており、過牛神経核、上オリーブ核、下丘、内側膝状体、大脳皮質聴覚野に至る聴覚系の神経回路網に顕著であり、顔面神経核、下オリーブ核、副嗅球、視床前背側核でも強い発現が認められた。NB-2欠損マウスは形態学的・解剖学的に大きな異常は認められなかったため、先ず聴覚系での強い発現に着目した解析を行った。聴覚刺激性痙攣に対する感受性では野生型が35匹25匹(71%)がwild runningを起こしたのに対し、NB-2欠損マウスでは35匹中16匹(48%)だけであり、有意な差異が認められた(χ^2=15.82,P<0.05).。そこで聴覚刺激痙撃において重要な役割を果たしている下丘でのc-Fosの発現を比較したところ、NB-2欠損マウスでは有意に低かった(P<0.01〜0.001)。また、純音に対するc-Fosの発現を下丘で比較したところ、野生型では多くの場合周波数に依存すると考えられる部位に明確なシグナルが認められたが、一方、欠損マウスでは認められなかった。これらの結果から、NB-2が下丘を介する聴覚機能に関与している可能性が強く示唆された。
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