最近、ユビキチン-プロテアソーム経路による時間、空間特異的な蛋白質分解が細胞の増殖や分化制御に密接に関与していることが明らかになりつつある。本補助金受領中、研究代表者はマウス初期胚で時期あるいは組織特異的な発現パターンを示す初めてのプロテアソーム遺伝子として3種類のユビキチンレセプター(Rpn10)サブユニットを単離したことを報告した。本研究では、これらRpn10サブユニット群をユビキチン経路の多様性を担うポイントの一つとして理解し、細胞増殖・癌化との関連を明らかにしていくことを目指している。最近、研究代表者は、Rpn10遺伝子産物を細胞に過剰発現させるとRpn10の型に対応して細胞分裂に対して全く異なる効果を示す事を見い出した。例えば、Rpn10aの過剰発現はB型サイクリンの分解を阻害する一方でS期の進行には影響を与えない。一方、Rpn10eはB型サイクリンの分解には影響を与えないものの、G2期におけるcdc2キナーゼの活性化を阻害し、核の倍数化(Polyploidization)を引き起こす。これらの現象はRpn10分子内のユビキチン認識ドメインに依存しており、各Rpn10はユビキチン認識ドメイン付近の特異的配列に応じて異なる細胞周期ターゲットを認識していると考えられる。現在、ポリユビキチン化された細胞増殖調節蛋白質群とプロテアソームとの相互作用についてさらに詳細な解析を行っている。さらに、最近、線虫C.elegansを用いた解析から、Rpn10が線虫の生殖の過程に必須であることを見い出し、卵の減数分裂制御との関連で研究をまとめつつある。
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