研究概要 |
細胞周期の制御は細胞増殖のみならず細胞の分化、アポトーシスなど様々な生命現象と密接に関わり、その異常は癌化に繋がる。細胞周期の進行にはサイクリン・Cdk複合体が中心的な役割を果たし、RB癌抑制遺伝子産物がその重要な標的の一つであること、あるいは、その活性を制御するCdk阻害因子が癌の発症や細胞の分化にも関与することなどが明らかとなっている。しかるに、サイクリン・Cdk複合体の活性を細胞の増殖、あるいは、分化の制御につなげる機構については未だ多くのことが未解決であり、重要な研究課題となっている。こうした中、現在我々は酵母Two-Hybridスクリーニングによって新規のCdk結合タンパク質としてサイクリンD・Cdk4に結合するPCS1、サイクリンE・Cdk2に結合するCeb1,Ciz1のクローニングに成功し、その機能の解析を進めている。これまでの解析から、PCS1は急性前骨髄性白血病の発症に関与する可能性が示唆されているPOD(Promyelocytic leukemia Oncogenic Domain)に局在すること、Ceb1は蛋白分解に関わる可能性があることなどが明らかになってきている。Cdkの活性の制御に関わるタンパク因子、あるいは、Cdkの活性の標的となるタンパク因子はこれら以外にも未だ解析されていないものが多数あることが予想されるので、PCS1,Ceb1,Ciz1などのCdk結合タンパク質の解析に加え、さらに新規のCdk結合タンパク質の検索と解析を行うことにより、どのようにしてCdkが細胞分裂の引き金を引くのか、あるいは、どのようにしてCdkの活性が制御され得るかについての検討を進めている。また、種々のCdk結合タンパク質が細胞増殖のみならず細胞の分化、アポトーシスなど様々な生命現象にどのようにして関わるのかについても特に注目して研究を准めている。
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