研究概要 |
骨芽細胞内でp57CDK阻害蛋白に結合する因子を検索し、p57がGタンパク質によるシグナル伝達の下流で細胞骨格をコントロールするLIM kinase-1に結合しその細胞内の局在を細胞質から核内へ変えることにより細胞周期の制御だけではなく細胞骨格の制御および細胞分化にも関わることを明らかにした。哺乳動物における脂質合成を支配的に制御している転写因子であるSREBP(Sterol Regulatory Element Binding Protein)を、肝臓特異的に発現するトランスジェニックマウスを作成した結果、著名な肝腫大を来たし、SREBPが脂質代謝のみならずp21CDK阻害蛋白遺伝子プロモーターを直接活性化することにより脂質代謝のみならず、細胞増殖の制御にも関与している可能性を明らかにした。cyclin-Cdk2キナーゼの発ガンへの関与を検証する目的で、レトロウイルスベクターによりCdk2,cyclins A, Eを有限の寿命を有する正常ヒト線維芽細胞において過剰発現させて、発ガンの指標の一つとしての細胞の不死化を促進できるか調べた結果、cyclin Aの過剰発現は、正常ヒト線維芽細胞を有意に不死化させることを見いだした。cyclin Aの過剰発現によって不死化した細胞の染色体DNAを詳細に解析することにより、cyclin Aの一過性の過剰発現が広範囲の遺伝子欠失・転座などの様々な染色体異常を引き起こすことを明らかにした。cyclin Aの過剰発現が、cyclin A-Cdk2の基質であるCdt1などの活性調節を乱して、進行中の染色体DNAの複製フォークを崩壊させることにより様々な染色体異常を誘発し、細胞の不死化を促進すると思われる。
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