研究概要 |
Mph2結合タンパクとしてHomeoprotein interacting kinase1,2,3(HIPK1,2,3)を同定した。これらのノックアウトマウスを作成したところ、それぞれの単独欠損マウスはいずれも顕著な構造的異常は示さなかった。しかしながら、HIPK2変異マウスより調整した胎児性繊維芽細胞は紫外線によって誘導される細胞死が、有意におこりづらくなっていた。この過程は、p53の安定化や活性化を介さずにおこる。一方、HIPK1とHIPK2の二重変異マウスは、胎生10日前後までしか生存しない。ここでは、様々な構造的異常や遺伝子発現の変化が見出された。神経管においては、Neural tube closureが強く障害されており、体節中胚葉においては、スクレロトームにおけるPax1、マイオトームにおけるmyogeninの発現誘導が強く障害されていただけでなく、脊柱管においては、後方化型のホメオティック変異が観察された。同様に、神経管においても、Hox遺伝子群の異所性発現が観察された。これらの結果は、HIPK1とHIPK2は、様々なシグナル伝達経路の下流として転写制御に寄与することが示している。すなわち、HIPK1とHIPK2は、様々な誘導シグナルによって細胞の分化や増殖が誘導される過程において、シグナル伝達の過程と細胞死誘導の過程に寄与する。これらを総合して考えると、うまく誘導シグナルが伝達されなかった細胞を除外するシステムとして機能する可能性が考えられる。
|