研究概要 |
サイクリン依存性キナーゼインヒビター(CDKI)遺伝子のp16^<INK4a>もしくはp2l^<cip1>による関節局所への遺伝子治療は、慢性関節リウマチ(RA)のモデル動物の関節炎を著明に改善させ、滑膜組織での炎症性サイトカイン産生を抑制した。しかし、CDKIをRAW264.7で強制発現させても炎症性サイトカイン産生は抑制されず、抑制はCDKIの間接的効果であることが示唆された。そこで、我々は、RA由来滑膜線維芽細胞(RSF)にp21^<cip1>を強制発現させた際の遺伝子発現の変化を検討した。方法は、RSFを培養し、p21^<cip1>アデノウイルスもしくは挿入遺伝子のないアデノウイルスを感染させた。3日後、DNAアレイ法にて3,528個の遺伝子の発現変化を解析し、変化のあったものはノーザンブロット、RT-PCR、ウエスタンブロット、ELISAなどで確認した。その結果、93個の遺伝子発現が増加し、672個の遺伝子発現が減少した(シグナル強度比【greater than or equal】2.0もしくは【less than or equal】0.5)。p16^<INK4a>、p27^<Kip1>の遺伝子の発現増加、I型IL-1受容体,MCP-1,MMP-9,cathepsin B, Kの発現の減少は、ノーザンブロット、RT-PCR,ウェスタンブロットもしくはELISAでも確認された。以上より、RSFにp21^<Cip1>を強制発現させると、他のCDKIの発現が上昇し、サイトカインレセプター(IL-1R1)、ケモカイン(MCP-1)、骨関節破壊(cathepsin B, K、MMP-9)、や血管新生(MMP-9)に関与するプロテアーゼの発現が低下する。以上より、p21^<Cip1>はCDK活性抑制以外に、他の遺伝子発現調節を介して関節炎の改善に関与していると考えられる。これは、CDKIが免疫エフェクター分子の発現制御に関与することを示唆する新知見である。
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