研究概要 |
関節リウマチ(RA)滑膜由来培養滑膜線維芽細胞(RSF)では、細胞増殖を抑制する条件で、サイクリン依存性キナーゼ阻害因子(CDKI)p16^<INK4a>が誘導されること、同様にCDKIp21^<Cip1>も誘導されるが、RSF以外の培養線維芽細胞でも誘導された。また、CDKI関節内遺伝子治療は、滑膜細胞の増殖抑制のみならず、炎症滑膜組織における炎症性サイトカイン産生や骨軟骨破壊を著明に抑制し、RAのモデル動物に著明な治療効果があった。さらに、1)p21^<Cip1>をRSFに強制発現させると72-96hr後にp16^<INK4a>が発現誘導されること、2)この現象は変形性関節症由来滑膜線維芽細胞などでは認められないこと、3)RSFでも継代の若い増殖の活発な細胞におこり、継代を重ねた細胞ではおこらなくなること、4)従来p16^<INK4a>の発現機構として知られるRas-Raf-MEK-etsの経路やポリコーム遺伝子群などの関与は認められないことなどを認めた。 この発現誘導における経路の分子を同定するため、GeneChip解析やreal-time PCRにより、p21^<Cip1>をRSFに強制発現させた時にp16^<INK4a>が発現誘導に伴い発現が上昇するが、継代を重ねてp16^<INK4a>が発現誘導されないRSFでは発現が変化しなくなった遺伝子群を解析した。その遺伝子群の中の一つをHela細胞にトランスフェクションするとp16^<INK4a> promoter活性が亢進すること、遺伝子産物を含む培地上清をRSFに加えると、p16^<INK4a>蛋白発現が上昇し、増殖が抑制されることが明らかとなった。今後、この遺伝子によるp16^<INK4a>発現誘導機構の詳細と、関節炎の治療への応用を検討する。腎疾患では、急性腎不全後の尿細管細胞の細胞周期調整にHIF-1,Ets-1が関与することを示唆するデータをえた。
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