細胞周期の制御機構は、その概要が明らかにされつつあるが、細胞周期から逸脱しアポトーシス、分化へと向かう機構は未だ不明な点が多い。TGF-βは、CdkインヒビターP21^<Cip1>、p27^<Kip1>、p15^<lnk4b>を活性化し、細胞のG1期停止を引き起こすが、一方、細胞のアポトーシスを誘導することが知られている。本研究代表者らは、Smad転写因子の活性化を介してG1期停止が、SmadとAP-1転写因子の相互作用を介してアポトーシスが誘導されることを報告しており、SmadとAP-1の相互作用により活性化される標的遺伝子を同定し、その活性化機構を解析することにより、細胞が細胞周期から逸脱しアポトーシスへと向かうスイッチ機構を解明しようと試みた。 1.cDNAマイクロアレイ解析、semi-quantitative RT-PCR法を用いて、TGF-β依存性アポトーシス誘導を担う標的遺伝子を検索し、遺伝子候補としてFasリガンド遺伝子、P51(P63)遺伝子、DAPキナーゼ3遺伝子、rad6のヒトホモログ遺伝子を得た。 2.FasとFasリガンドの相互作用を阻害しアポトーシス誘導を抑制するブロッキング抗体により、あるいはドミナントネガティブ型変異p51(p63)の過剰発現により、TGF-β依存性アポトーシスが抑制されることを見出した。 3.Fasリガンド遺伝子プロモーターのレポーターコンストラクトを用いてルシフェラーゼ解析を行い、TGF-β刺激に伴いプロモーターの転写活性が著明に上昇することを示した。さらに、同プロモーターにAP-1、Smad転写因子の結合配列が存在することを見出し、両結合配列に変異を導入したプロモーターのレポーターコンストラクトを作製している。
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