研究課題
細胞周期制御の基幹因子であるCdk-サイクリンの活性制御について、現実に生きた細胞内におけるネットワークの解明をめざした。1.受精によるヒトデ初期胚細胞周期の開始に際しての、M期サイクリン-Cdkの活性化機構を解析した。この活性化のためにはM期サイクリンの蓄積が必須であるが、サイクリンAの蓄積はMAPKで抑制されるのに対して、サイクリンBの場合はRskによって抑制されていた。両M期サイクリンの蓄積制御システムが異なっている可能性が考えられる。2.カエル初期胚細胞周期におけるS期開始は、サイクリンE1に依存していることが知られている。MBT(中期胞胚遷移)以降について解析した結果、サイクリンE1はE2に置き換わることが判明した。しかもノックダウン胚は、サイクリンE2の場合は、E1とは異なって、神経胚期に至る直前に致死となった。これらの結果は、サイクリンEサブタイプの機能分担を初めて明らかにするものである。3.Jab1はCdkインヒビターp27を負に制御するが、その遺伝子(CSN5)を構成的に発現するトランスジェニックマウスを作製し解析したところ、末梢血中の白血球数が増加し、ヒトの慢性骨髄性白血病(CML)とよく似た症状を呈した。このマウスでは造血幹細胞の画分(KSL細胞)が顕著に増加していた。また、Jab1+/-マウスは骨髄機能不全となり造血幹細胞の画分が減少した。この際、Cdkインヒビターp27,p16の発現量、細胞内局在が変化していた。これらの結果は、Jab1がこれらのCdkインヒビターを介して造血幹細胞の増殖・維持の制御にかかわること、さらには、Jab1の過剰発現により白血病幹細胞が発生・増殖することを示している。
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