研究概要 |
本研究では、分裂・出芽両酵母を使って、M期開始の制御機構を解析し、以下の知見を得た。 1.成長極性異常を感知しM期開始を制御する新規チェックポイント機構(分裂酵母):成長極性異常変異体mor2の解析から、原因遺伝子にコードされる新規タンパク質Mor2が、成長極性の維持と確立に重要であることを見い出している。mor2変異体では、細胞質微小管末端因子CLIP-170様タンパク質Tip1が細胞内に分散することから、Mor2は、細胞端の領域を限定するのに重要であることが示唆された。さらに、mor2変異は、高温で細胞周期のG2期遅延を誘導し、その際、Wee1キナーゼが重要であること、Ndr kinase Orb6と機能関連することがわかった(D.Hirata et al., EMBO J., 2002)。 2.成長極性の変換を制御するチェックポイント機構の解析(分裂酵母):成長極性変換に欠陥のある単極成長変異体monの解析から、DNA複製の異常が、単極成長様式の維持と細胞周期の遅延をもたらすことが示唆された。DNA複製異常時の単極成長様式の維持に、S-phase checkpoint経路が関与すること、さらに、既存の成長極性制御因子が関与することを見いだした。さらに、G1期とS期のそれぞれの時期における単極成長様式の維持は、異なる制御系によって調節されることが示唆された(投稿準備中)。 3.Ca^<2+>情報伝達経路によるM期開始制御機構(出芽酵母):本経路で機能する分子としてPkc1を同定しているが、Pkc1の機能が、既存のMAPK経路に依存しないこと、細胞周期の主要な転写因子に依存することが示唆された(投稿中)。さらに、pkc1変異の多様な表現型を、遺伝子量の増加により抑圧する遺伝子を系統的に分離している。
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