研究概要 |
本研究では、分裂・出芽両酵母を使って、M期開始の制御機構を解析し、以下の知見を得た。 1.M期開始を制御する情報伝達ネットワーク(出芽酵母): 細胞内で主要な二つの情報伝達経路、Ca^<2+>情報伝達経路とHOGMAPK経路が、細胞増殖(出芽機構とM期開始)を拮抗的に制御することを見いだした。具体的には、Calcineurinが、出芽に先立つアクチン極性化とSwe1キナーゼの活性化を介しM期開始を阻害し、一方、HOG経路が、アクチン極性化後の出芽機構を活性化することによりM期開始を促進することを見いだした。さらに、HOG経路によるM期開始促進機構の本質は、形態形成チェックポイントに依存したSwe1蛋白質分解の解除(分解促進)に起因することが示唆された。本研究により、細胞増殖を制御する、複雑な情報伝達経路の一端が明らかになった(A.Shitamukai et al.,J.Biol.Chem.,2004)。 2.成長極性の変換を制御するチェックポイント機構(分裂酵母): 成長極性変換に欠陥のある単極成長変異体monの解析から、DNA複製の異常が、単極成長様式の維持と細胞周期の遅延を誘導することが示唆された。解析の結果、DNA複製異常時の単極成長様式の維持には、S-phase checkpoint経路が重要であるが、既知の主要な極性変換制御キナーゼはこの系では重要でないこと、を見いだした。さらに、G1期とS期では、単極成長様式の維持機構が、異なることが示唆された(投稿中)。
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