研究概要 |
本研究では、分裂・出芽両酵母を使って、M期開始の制御機構を解析し、以下の知見を得た。 1.M期開始を制御する極性チェックポイント経路に関連する新規制御因子(分裂酵母):成長極性に必須な分子Mor2の欠損は、M期開始を阻害する。この機構を理解するため、mor2変異と同様の表現型を示す変異体mor4を取得し、原因遺伝子を同定したところ、Nak1/Orb3 kinaseであることがわかった。次に、Nak1/Orb3/Mor4とMor2との機能的関係を調べたところ、Nak1はMor2の上流で機能することが明らかになった。さらに、Nak1と相互作用する分子を同定したところ、進化上保存された分子を得た(投稿中)。 2.EtOHストレスによるM期開始の阻害(出芽酵母):細胞増殖へのEtOHストレスの効果を調べて結果、EtOH添加によって、アクチン細胞骨格が一過的に分散し、それと同時に、M期開始が阻害され、母細胞のサイズが増加することがわかった。その際、細胞周期エンジンを抑制するSwe1 kinase(Weel kinaseホモログ)が重要で、実際、蛋白量が一過的に増加すること、swe1欠損株では細胞サイズの増加が観察されなかった。さらに、EtOHストレス下の成育に重要な遺伝子を網羅的にスクリーニングした結果、少なくとも256個の非必須遺伝子が、重要であることがわかった(S.Kubota et al.,Biosci.Biotechnol.Biochem.,2004)。 3.S-adenosylmethionine(SAM)の細胞周期制御への関与(出芽酵母):Ca^<2+>情報伝達経路はSwe1を活性化することによりM期開始を阻害する。Calcineurinと同様の機能をもつ遺伝子を同定する過程で、SAMを蓄積する変異体を得た。解析の結果、SAMの蓄積は、Swe1 mRNAレベルを顕著に減少させることがわかった(M.Mizunuma et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2004)。
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