研究概要 |
本研究では、分裂と出芽の両酵母を使って、M期開始制御機構を解析し、以下の知見を得た。 1.M期開始を制御する細胞極性チェックポイント経路に関与する新規制御因子(分裂酵母):進化上保存されたMO25蛋白質の分裂酵母のホモログPmo25が、Nak1,Mor2,Orb6と協調的に機能する細胞極性ネットワークを形成することを見出した。このネットワークは、細胞質分裂後の細胞分離と成長極性制御(確立と維持)に重要であり、この経路の破綻は、M期開始の遅延を誘導する。また、Pmo25は、M期中心体から細胞質分裂面に局在変化するが、この中心体への局在と、さらに、下流のNak1-Orb6キナーゼ活性は、細胞質分裂の開始を制御するSIN(Septation Initiation Network)の制御下にあることがわかった。さらに、Pmo25は細胞極性異常をモニターするチェックポイント機構にも関与することが示唆された(M.Kanai et al., EMBO J. 2005)。 2.M期の姉妹染色分体の完全分配に必要な微小管結合因子(分裂酵母):進化上保存された、微小管のプラス端の結合因子Mal3が、M期の姉妹染色分体の完全分配に必要な、紡錘体微小管のキネトコアへのbipolar attachmentに重要であり、Mal3の変異は、bipolar attachmentの完了をモニターするチェックポイントの中のBub1-Bub3-Mad3-Mph1経路を活性化することが示唆された(K.Asakawa et al., EMBO Rep. 2005)。 3.Pkc1によるM期開始制御機構(出芽酵母):Ca^<2+>情報伝達経路は、Swe1を制御することによりM期開始を制御する。Ca^<2+>情報伝達経路上で機能する分子のスクリーニングから、Pkc1キナーゼを同定した。解析の結果、Pkc1は、M期開始を抑制するCln2/G1サイクリンの安定発現と細胞極性の維持に重要であることが判明した。また、この経路にRho1が関与することも示唆された(M.Mizunuma et al., J.Cell Sci. 2005)。
|