APC/サイクロソームは、細胞周期調節因子の分解を制御するユビキチンリガーゼである。Fizzy/Cdc20ファミリーに属する分裂酵母のSte9蛋白質はG1期で機能するAPC/Cの活性化因子で、Ste9が機能しない変異株では細胞周期をG1期で停止せず、細胞分化(接合、減数分裂、胞子形成)が全く起こらない。分化不能形質の抑圧変異をスクリーニングしたところ、接合をバイパスし、一倍体細胞であるにもかかわちず異常な減数分裂を行う興味深いものが得られた。この異常は、減数分裂開始を制御するAPC/C^<Ste9>の基質の分解異常が原因と考えられるため、基質の同定を試みた。基質候補の一つであるMei2は、増殖から減数分裂への移行に必須の蛋白質で、活性化されると一倍体細胞でも強制的に増殖停止と細胞分化を誘導する。検討の結果、Mei2はAPC/C^<Ste9>の基質では無かったが、Mei2がユビキチン化されプロテアソームにより分解されている事が判明した。分解に必要なユビキチン化酵素を検索したところ、意外にもN-ent rule蛋白質分解経路で機能するE2/Ubc2とE3/Ubr1であったが、実際にN-end ruleに従って分解されているかは今後の課題である。Mei2は常に発現しており、特に増殖中はその働きが抑圧されねば細胞が致死となる。増殖細胞ではPat1キナーゼがMei2をリン酸化しているが、ユビキチン化はこのリン酸化に依存して起こっており、Mei2の分解は細胞の生理状態で制御されていた。また、Pat1キナーゼはMei2の転写因子であるStellもリン酸化するが、このリン酸化部位に14-3-3蛋白質がリン酸化依存的に結合して転写活性を抑制していた。本研究により分裂酵母の細胞分化はAPC/Cに加え、N-end rule蛋白質分解経路によっても多重に制御されている事が明らかになった。
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