研究課題
ショウジョウバエのDNA複製関連遺伝子を統合的に転写制御するエレメントとして、DRE(DNA複製関連エレメント)、E2F結合サイト、CFDD結合サイト等が存在している。これらのエレメントには、DREF(DRE結合因子)、E2F・DP複合体、CFDD(複製遺伝子/DREF遺伝子共通制御因子)等の転写因子がそれぞれ結合する。このうちDRE/DREF制御システムは、細胞周期制御因子サイクリンAやシグナル伝達因子Rafの発現をも制御しており、ショウジョウバエの複製・増殖関連遺伝子のマスター制御因子のひとつである。PCNA(増殖細胞核抗原)遺伝子プロモーターに存在するDREをおとりとして、酵母one-hybridスクリーニングを行ない、DREに結合する因子のcDNAクローニングを試みた。その結果DREFの他にCutが結合因子として同定された。Cutは3つのホメオドメインと1つのCutドメインというそれそれ独立して機能しうる4つのDNA結合ドメインを持つユニークな転写因子であり、形態形成過程に於いて細胞分化を誘導する因子として知られている。Cutはin vitorでDREに結合しうることを、ショウジョウバエKc細胞核抽出液と抗Cut抗体を用いたゲルシフトアッセイにより示した。ショウジョウバエS2細胞に二本鎖RNAを導入してDREFをノックダウンするとPCNAプロモーター活性が低下するが、Cutをノックダウンすると逆にPCNAプロモーター活性が上昇した。このことはCutが、DREFに対して拮抗的に作用し、PCNAプロモーター活性に抑制的に働いていることを示唆する。また抗DREF抗体と抗Cut抗体を用いたクロマチン免疫沈降法により、増殖中の細胞では、主としてDREFがゲノム上のPCNAプロモーター領域に結合し、一方βエクダイソンにより増殖停止して分化誘導が起こった細胞では主としてCutがPCNAプロモーター領域に結合していることが示唆された。この細胞分化に伴うDREFからCutへの乗り換え現象は、増殖と分化の切り換えの仕組みを考える上で重要である。
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