研究概要 |
種々の動物や植物における発生のシステムの構造を調べ,それを比較検討するための基礎的データを本年度は得ることに集中した. (1)棘皮動物(ウニ)について(赤坂):ウニを対象に、これまでに多くの形態形成に関わるホモログをクローニングした.本年度は特に,T-brainホモログとBrachyuryホモログについて解析し,原腸陥入と原腸形成に関与することが示唆された.(2)昆虫(コオロギ)について(野地):昆虫の多様性を獲得するメカニズムを解明するために,ショウジョウバエとは異なり不完全変態するコオロギの発生システムを遺伝子レベルで研究するため,約3000クローンの塩基配列を決定し,その一部についてIn situ hybridizationを行い,発現パターンを決定した.さらに,コオロギの遺伝子操作法を確立するために,トランスポゾンの卵内での活性を測定した結果,活性があることがわかった.(3)尾索類(ホヤ)について(佐藤):Ciona科のホヤを用い脊索および筋肉細胞の分化の分子機構について明らかにするため,ベータカテニンの下流遺伝子を検索し,Lim-homeobox遺伝子,FGFなどが含まれることがわかった.(4)カワヤツメ,スッポン(倉谷):動物の顎や亀甲の形態形成を解明するために,カワヤツメの顎の形成をhomeobox遺伝子に着目して解析し,顎口類の顎の形成における分子カスケードをヤツメウナギも持っていることが示唆された.亀甲の形成に関与する遺伝子について検索を行なったが,亀甲特異的な遺伝子はまだ見つかっていない.(5)植物(長谷部):花器官の形成は、花器官形成遺伝子と呼ばれるホメオティックセレクター遺伝子によって担われているので,それらの遺伝子を解析した.その結果,FLO/LFY遺伝子による花器官形成遺伝子の誘導はシダ植物段階から種子植物が進化するときに獲得されたことがわかった.
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