感覚器形成過程の制御機構の理解には、関与する分子の実体と機能を明らかにする必要がある。こうした分子の探索を目的に、ゼブラフィッシュを用いた突然変異体スクリーニングを試みることにした。本研究では、スクリーニングを簡便化するための工夫としての感覚器原基がGFP発光するトランスジェニックゼブラフィッシュの作製及び系統化と、この系統を基盤とした変異フィッシュのスクリーニング開始を行った。ゼブラフィッシユSix4.1は、鼻及び耳の形成領域に最も早く発現するマーカー遺伝子の一つであるが、感覚器原基が顕在化した後も発現が継続される。そこで、この発現パターンを利用することを想起し、Six4.1遺伝子ゲノムの転写制御領域を単離し、GFP遺伝子をレポーターとして融合した構築を作製した。この構築をゼブラフィッシュ初期胚に注入したところ、約3割の胚で鼻と耳の原基においてGFP発光を示した。GFP陽性の胚を成魚まで生育させ、GFPの発光を指標に次世代胚においてトランスジェニック系統の単離を試みた結果、鼻及び耳の原基が強く発光するGFPトランスジェニックフィッシュ系統を得ることに成功した。この系統における感覚器特異的なGFP発現は、4日幼魚においても観察されたので、鼻及び耳形成の予定領域から後期感覚器原基までを、生体で持続的に視覚化した系統の作製に成功できたと判断した。次に、得られたGFPフィッシユ系統を変異フィッシュのスクリーニングに活用するためにホモ体化し、大量育成した。雄成魚に対し、変異剤ENU処理を行うことにより、ゲノム遺伝子にランダムに変異を導入した。現在、変異剤処理した雄魚と無処理の雌魚とを交配して得たF1世代を育成している。今後、F3胚の段階で、GFP発光の異常を指標に、感覚器形成が異常になる変異フィッシュを探索する予定である。
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